院長コラム
2023.12.22
ベテル通信⑥ 睡眠時無呼吸症候群と慢性腎臓病
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と慢性腎臓病(CKD)
今回は睡眠時無呼吸症候群が心臓と腎臓に与える影響をできるだけやさしく解説します
○呼吸により肺に送られた酸素は血液に取り込まれ様々
な臓器に送られ生命を維持します。
○脳や心、肺、腎などの臓器には互いに協力し合って
健康を維持するメカニズムがあります。
○睡眠時の無(低)呼吸による低酸素の影響は各臓器に
対しストレス反応を起こさせ,機能障害を誘発します。
○心臓と腎臓の病気が相互に影響を及ぼし悪循環となる
ことがあります。因果関係の実際はとても複雑です。
○慢性の心臓病、腎臓病(CKD)のある方はSASが合併し ていると病気の経過が悪くなることがわかっています。
上記○の内容をふまえて、「むくみ」を例にSASと心臓と腎臓の関連性を説明してみます。ただし、病態には多様性があり、全ての人がこのような事例で説明できないことに留意してください。
むくみは様々な要因で誰にでも起こります。むくみとは血液中の水分が血管の外に余分に浸み出した状態のことを言います。日中は重力で下半身、横になると顔面や咽頭付近にも生じます。夜間、就寝中に余分な水分を含んだ血液は一気に心臓や肺に集まります。これを解決するために心臓はホルモンを出して「余分な水分を尿として出すように」と腎臓に助けを求めます(夜間頻尿の原因の一つ)・・・が、この時SASがあると酸素不足の心臓は悲鳴をあげ、腎臓に血液を十分に送れなくなります。同様に酸素不足で元気のない腎臓は送られる血液の量が少ないので心臓に「尿が作れないからもっと血液を送れ」と指令を出して頑張るのです。このように心臓も腎臓も負荷がかかって疲れ切ってしまい、尿を作る働きが悪くなって水分がまた、体内に貯まってしまう悪循環となります。近年は慢性の腎臓病(CKD)や心臓病を個別にではなく、広くSASを含めた睡眠障害からトータルでケアしていくことが求められています。